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眉間に小さなしわを寄せて、フブキが先を続けた。
「春はもうそこまで来てる。そうなれば獲物はますます狩りにくくなる。
獲物がとれなきゃ飢えて死ぬのはあたいたちだ。言ってることがわかるかい?」
「はい! ゴン太! 全然わかります!」
顔中をヨダレまみれにしながら、ゴン太はこたえた。
フブキがあきれたように首を振る。
「この狩りに失敗は許されない。だから念には念を入れる。
お前は森を迂回して、反対側から獲物をせき止めるんだ。やれるね?」
「ゴン太、全然できます! 森を回り込めばいいんですね!」
ゴン太はスピードをあげ、そのまま森の茂みへ突っ込もうとした。
「お待ち! もっと向こうからひそかに回り込むんだよ!」
フブキが慌てて声をかける。
「え!? あ、はい! 向こうですね!」
ゴン太は茂みの前で急転回し、遠回りするようにして森の中へ入っていった。
フブキの後ろで黙ってやりとりを聞いていた眼の細いオオカミが、面白くなさそうにフブキに言った。
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