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「……やっぱりボクは駄目オオカミだ。どうしていつもこうなっちゃうんだろう」
ゴン太は傍にはえていた一本の木に、自分のオデコを思いっきりぶつけた。
ゴンッ!
木は驚いたようにグラグラと揺れた。
「こんなんじゃあ、ちっとも痛くないよ!」
ゴンッ! ゴンッ!
ゴン太はさらに強く、オデコをぶつけた。
ゴンッ! ゴンッ! ゴンッ!
「なんで痛くないんだよ! こんな石頭があったってなににもなりゃあしないのに!
バカッバカッバカッ!」
ゴン太に激しく頭突きされ、その木は今にも倒れそうなほど大きく揺れた。
「おうおうおうッ! 誰でえ誰でえ! やかましいッ!」
木の根っこの方にあった泥の穴倉から、寝ぼけまなこで出てきたのは一匹のカエルだった。
カエルの怒鳴り声に驚き、ゴン太は顔を覆って小さくなっていた。
寝起きらしいカエルは、目をこすりながら言った。
「ったく、冗談じゃねえよ。こちとらまだ眠りが足んねえってのによ。
ひとさまの寝床の上でゴンゴンゴンゴン、キツツキみてえに打ち鳴らしやがって。
いってえどこのどいつよ!」
カエルのトロンとした目が見開かれてゆくのと、
ゴン太が爪の隙間から、そろ~っとカエルを覗き込むのとがほとんど同時だった。
「ゲロゲロッ!」
「ワオォーン!」
威勢のよかったカエルは、相手がオオカミだと気づいた瞬間穴倉に飛び込み、
ゴン太も絶叫しながら木の裏へと駆け込んだ。
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