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しばらくして、カエルが穴倉からおそるおそる出てきてあたりをうかがった。
木の裏を見やると、尾っぽを股の間に挟み込んで、
プルプルと震えているオオカミの尻がはみ出していた。
カエルが再び「ゲッ!」と驚く。
カエルの驚いた声に、オオカミは精一杯小さくしていた体をさらに小さく縮ませた。
そのオオカミの様子を見て、カエルは穴倉に飛び込むのをやめた。
「よ、よお、めえさんよ……」
カエルは思いきってオオカミに声をかけた。
小さくうずくまっていたゴン太が、木の裏からこわごわと顔をのぞかせた。
カエルが自分がいる方に向かって、ちょいちょいと手招きしている。
ゴン太は後ろを振り返った。誰もいなかった。
それでもカエルに確認するように、太い指で自分を指さした。
カエルはじれったそうに怒鳴った。
「そうだよ! めえさんだよ! 他に誰がいるってんでえ!」
ゴン太はビクッとしながらも、これ以上怒られるのはイヤだったので、
いそいそとカエルの前に出ていった。
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