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彼女と初めて会ったとき、
第一声は「おじさん、おなかすいた」だった。
お定まりの文句がこんなにしっくりとはまるものかと、
苦笑してしまったのを覚えている。
「おじさん?」
私がぼーっとしていると少女がすっと腕をまわしてきた。
「なんか食べたいね」
なんのてらいも恥じらいもない信じきっているまなざし。
奥二重の黒目がちの目がくりくりと動き、
利発そうに輝いている。
「なにがいい?」
「寿司とピザとケーキと焼肉!」
「……それはかまわないが、全部食べれるのか」
「食べれなくても食べたいものは全部言わないと気が済まないの」
「じゃあ、全部食べれるチェーン店だな」
「わお!」
少女が嬉しそうに笑うと、本当にそこに小さな太陽が咲いたように
胸の中があったかくなった。
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