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「心の日向ぼっこ」
「お待たせしました~♪」
ウェイトレスの甲高い声がして、次々と料理が運ばれてきた。
「よーし!食うぞー!」
今年で15になる娘が黒髪を後ろに結わえながら、気合を入れた。
テーブルに並べられた料理に黒目がますます爛々と輝いていく。
「お父さん、早く食べよ!ピザさめちゃうよ!ほら!」
「おう。そっちのバジルのも取ってくれ」
「はいな! あ、じゃあ、アンチョビのもはんぶんこね!」
こんなに贅沢なデートはないな、と思った。
「お父さんまた来ようね!」
「おい、もう次の予約か」
「女は貪欲なの」
「食い意地だろ」
「違うよ」
「じゃあ、なんだ」
「お父さんに会いたいからに決まってんじゃん」
「うっ」
馬鹿め。
さらっと嬉しいことを言うんじゃない。
「あ、お父さん! もうまたかよ、鼻水がピザに垂れちゃうじゃん!」
「涙もろくなる年頃なんだよ」
「しょうがないなこのオヤジはまったく!」
娘がテーブルの上の紙ナプキンまで総動員して
私をリニューアルしてくれる。
「ほら、隣のテーブルのも持ってきたから、これも使って!」
「お、おう……」
私は鼻をかみながら、娘の中の、太陽のようにあったかい匂いに感謝した。
―おわり―
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