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『私と、取引しませんか』
何を言っているんだろう
神田は不思議な男だ
陶器のような白い肌は体温を感じさせない
落ち着いた雰囲気からは年長の神父のような気迫があるが、細められた大きな瞳には少年のような無邪気さも感じる
私は何故か神田の提案にぼんやりと頷いていた
『ああ、良かった
では、内容なのですが、貴女の身体を買いたい』
微笑混じりに神田が言った
「…は?」
私は困惑する
『と、いうのも、死後の、身体です
貴女が死んだ後、その身体を譲って頂きたい
勿論、タダでとは言いません
ここに38億6千万円あります
このお金をお譲りしましょう
余生を出来る限り楽しんで頂きたいので…』
神田は大きなスーツケースの中身をチラリと私に見せた
沢山のお金が詰め込まれていた
「あの、そんな、…」
神田は言う
『悪い話ではないでしょう、貴女はあと、1ヶ月で死んでしまう
この世の贅沢を全てやり尽くしても余る額ですよ』
アイスティの氷が、溶けてカランと音を立てる
私は暫し間を置いて、神田に尋ねた
「私、1ヶ月で死ぬんですか」
神田は短く、ええ、とだけ答えた
こんな意味の分からない男の戯れ言なんて、気にしなきゃいいよ、と冷めた私が遠くで呟いたけど神田と対当する私は、引き受けます、と答えていた
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