とある賢者の特別な日

4/10
前へ
/192ページ
次へ
****** 「―――……一体何の用だ、アゼル。」 しかめっ面のメイフィルに対し、アゼルはニコニコと答えた。 「今日は特別な日ですからね!アゼルはいてもたってもいられなくて、参上した次第でございます!」 「それじゃ分からん」 む、と更にメイフィルの額には青筋が浮かぶ。 それもそのはずである。彼は寝起きが決して良くはない。昨夜も遅くまで研究・開発をしていたので、寝不足なのだ。 そんな時にハイテンションに付き合え、というのは無理な話なのである。 「何の用もなく来た訳ではないのは分かるが、――――ああ、すまん――――俺様には特別な日ではないことは確かだな。」 ハジメがメイフィルに朝飯、アゼルの前にコーヒーを置く。 メイフィルはそれに軽く礼を言って、食べ始めながら答えた。 ――――が、目の前のアゼルの顔を見て噴き出した。 「――――な、何て顔してるんだっ!?怪談話に出そうな顔してるぞ!?」 「だって、だって!メイフィル様が自分に関係ない、なんて言うから…っ!!」 アゼルは悲愴な表情を両手で隠すようにわっと泣き出す(真似をする)。 メイフィルは今日が何の日か、眉間にしわを寄せながら考えるが、思い浮かばない。 「――――…フィル、今日は何日だ?」 「え?9月24日だな。」 「――――…お前の、誕生日は?」 「え……9月24日……。  ―――――…あ。」 助け舟のハジメの言葉で、合点がいったようでメイフィルは手をポン、と叩いた。 表情は明らかに「忘れていた」というのを物語っている。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加