三御題

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「どう?」 「なにが…ですか?」 思わず敬語になってしまった。 だが、今この瞬間は悪魔を忘れられた気がした。 「痛みです。」 「え?」 そう言えば、腕も脇腹も痛くない。 ついでに転けたときについた傷も治っていた。 「君は…?」 「わたしは、なんだっけ、えっと、あれ?」 急に彼女はパニックになった。 こんな状態でもし奴らに見つかれば、間違いなくやられる。 「それは取り敢えず置いといて早く移動しよう。」 彼女の手を取り、前を向く。 『ヤっと。』 『見いつケた。』 『遊ボうよ。』 本当に最悪だ。 まだ一体ならいい。 三体もいるのが運の尽きだろうか? でも、せめてこの子だけでも。 『シんで! アはははハはは!』 三体同時に突っ込んでくる。 「伏せて!」 ―恐らく、僕1人が盾になったところで意味は無いだろう。 僕の腹や胸を突き破り、彼女も死んでしまう。 けど、そんなことを考える前に体が動いていた。 まるで僕より小さい彼女を抱き締めるように――。 「…………。」 彼女が呟いた気がした。 次には視界が白に染まり、僕の腕から温もりが消えていた。
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