さらば。

4/6
前へ
/37ページ
次へ
「今日誰か来てた?」 話せない私に話しかけてくれる姉。 元々きてたけどスルーしたなんて言えない。 パソコンは普通食卓に持ってこないので、とりあえず返答しない。 今日は、珍しく、しゃべれない私に、こんな事態が起きた。 「ひと、電話だぞ」 思わず声をあげそうになる。 私に…、電話? 声も出ない、話したくない、話せない、こんな私に? 『もしもし』 知らない声だ。 同じクラスで小学校のころの友だちかと、一瞬期待したのだが。 『お父さんから話せないことは聞いてるわ。 だからただ聞いててね』 私が途中で電話を離すかも知れないのに。 お人好しということはよく分かった。 幸い電話は子機だったので、何かあったら調べるために、自室で話を聞いた。 『私、産休でお休みになった加藤先生の代わりに』 加藤先生…、裏サイトで見たことがある。 「ヤったのかwww」 「夫オレwwww」 とかいうコメントを見たことがある。 『担任をすることになった照橋瑞希と言います。 一応挨拶だけでもしておこうかと』 裏サイトで検索をかけてみる。 あった。 1Aのところにしっかり書きこまれていた。 なるほど。 『あ、それではこれで』 また私は思わず声をあげそうになった。 内心、これだけ?と思っていたからだ。 電話は切れ、その後子機を戻し、食卓に戻る。 「誰からの電話だったんだ?」 父が聞く。 話せない私に。 「担任の先生か?」 頷きたくないし、頷く意味もないし。 何分私は現在反抗期である。 「……」 まあそうなる。 ちなみに私が通っている中学校。 県立の里旧(サトフル)中学校。 その裏サイトを…、いや、言ってしまうと里旧小学校の裏サイトを立ち上げたのも私だ。 里旧中学校の裏サイトを立ち上げたのは今からざっと2か月前。 小学校の卒業式の日である。 立ち上げたとき、あまり誰も来なかった。 そう、誰もろくにパソコンなんて持っていない。 不登校になった私は、見かねた父が買ってくれた。 本当に申し訳ないが、口には出さない。 裏サイトが賑やかになってきたのは、授業が始まった日になった時からだ。 おそらく、情報の授業で、インターネットを使っているのだろう。 そんな時間だ。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加