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深夜の巡回中、こちらに向かって歩いてくる銀髪に目が止まる。
真夜中だからか、今はいつもの3人ではなく、夜の静かな街を1人颯爽と、それでいて、あの男独特の気怠さを感じさせる、ゆったりとした速さで。
ソイツは歩いてくる。
「ふぅ…、」
短くなった煙草を地面に落とし、脚で踏み消してから、また新しい煙草に火を付け、紫煙を燻らせて。
こちらもまたゆっくりと、歩き出す。
銀髪との距離は……、あと、10m…
互いにゆっくりゆっくり歩き、そして周りがあまりにも静かなものだから、余計に距離が縮まるのが遅く感じて。
あと、5m…
目を合わさぬように注意を払う。
あと、1m
甘い香りが鼻を掠め、いよいよすれ違う俺と、銀髪。
あと、0cm
「──待ってる」
すれ違い様に囁かれた甘い言葉に、慌てて振り返る。
「万 事 屋で待ってるよ。大事な話があるから」
顔をこちらに向けて、柔らかく笑う銀髪に。
心臓がやけに大きく、ドキリと跳ねた。
──すれ違うのは体──
──惹かれ合うのは、心──
-end-
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