そして私は、さらに壊れる

2/2
前へ
/241ページ
次へ
「……はぁ。まったく、嫌になりますね」  今更ながらに、痛感した。この世には、良い人と、悪い人が居る。  それは、私にとってのものであり、他の誰かにとってもそう。  彼らにとって、私が悪い人なように。私にとって彼らが悪なように。世界にとっても未来にとってもどちらかが悪。  もしくは両方悪、なのかもしれません――なぁんて。  いやまあぶっちゃけ世界がどうとか、関係ないんですけどね。私、闘いに必要な理由は、既に持ち合わせてますし。  ただ闘い続けるにはそれで十分なんですよ。この思い出だけで……この想いだけで。  世界がどうとか関係なく。謂わば、“私の世界”の為って感じです。  ――ああ、私はきっと、幸せだったんだろうなぁ。  目を閉じただけで瞼の裏に浮かぶ――なんて詩的なことは起こりませんが。……起きないんですか? ええ、起きませんとも。  ですが、馳せれば、思い出せます。  優しい友人。暖かい親友。言い合いのできるライバル。頼りになるお兄ちゃん。面倒見の良いお姉ちゃん。そして―― 「“大罪解放──憤怒、傲慢、強欲”」  ──好きな人が、居て。  最初は、自由を体感したいだけだった。そして気付けば多くのものが私の側にあった。  でも、もう戻れない。 「さあ、始めましょう。私らしい思考で、私らしくない方法で。あくまで暴力的に、一方的に、守りたいが為の闘いを」  そういえば、初めてこの力を使った時も親友を守るためだった。思えば、あの時から私は変わったのだろう。変わらなければ、ならなかったのだろう。  勿論、彼女を理由にしたりしない。悪かったのは世間で、他人で、無力な私だったのだから。  ……激情が、理性を侵し始める。きっと、次に目が覚めたら全て終わってるだろう。そして私は、どうせ誰1人呼吸しない空間で泣くんだろうなぁ。  ──さあ、切り換えろ。  ここから先は地獄の再現。“魔の王を継ぐもの”らしく、従わない者に対して独裁的な罰を下すだけ。  まあ、簡単に言ってしまえば、これから行うのは、ただ―― 「狂え世界。従え正義。集え万物。すべては、我が心のままに」  ――ただ圧倒的な、虐殺だ。
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加