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「……はぁ。まったく、嫌になりますね」
今更ながらに、痛感した。この世には、良い人と、悪い人が居る。
それは、私にとってのものであり、他の誰かにとってもそう。
彼らにとって、私が悪い人なように。私にとって彼らが悪なように。世界にとっても未来にとってもどちらかが悪。
もしくは両方悪、なのかもしれません――なぁんて。
いやまあぶっちゃけ世界がどうとか、関係ないんですけどね。私、闘いに必要な理由は、既に持ち合わせてますし。
ただ闘い続けるにはそれで十分なんですよ。この思い出だけで……この想いだけで。
世界がどうとか関係なく。謂わば、“私の世界”の為って感じです。
――ああ、私はきっと、幸せだったんだろうなぁ。
目を閉じただけで瞼の裏に浮かぶ――なんて詩的なことは起こりませんが。……起きないんですか? ええ、起きませんとも。
ですが、馳せれば、思い出せます。
優しい友人。暖かい親友。言い合いのできるライバル。頼りになるお兄ちゃん。面倒見の良いお姉ちゃん。そして――
「“大罪解放──憤怒、傲慢、強欲”」
──好きな人が、居て。
最初は、自由を体感したいだけだった。そして気付けば多くのものが私の側にあった。
でも、もう戻れない。
「さあ、始めましょう。私らしい思考で、私らしくない方法で。あくまで暴力的に、一方的に、守りたいが為の闘いを」
そういえば、初めてこの力を使った時も親友を守るためだった。思えば、あの時から私は変わったのだろう。変わらなければ、ならなかったのだろう。
勿論、彼女を理由にしたりしない。悪かったのは世間で、他人で、無力な私だったのだから。
……激情が、理性を侵し始める。きっと、次に目が覚めたら全て終わってるだろう。そして私は、どうせ誰1人呼吸しない空間で泣くんだろうなぁ。
──さあ、切り換えろ。
ここから先は地獄の再現。“魔の王を継ぐもの”らしく、従わない者に対して独裁的な罰を下すだけ。
まあ、簡単に言ってしまえば、これから行うのは、ただ――
「狂え世界。従え正義。集え万物。すべては、我が心のままに」
――ただ圧倒的な、虐殺だ。
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