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その笑顔をむけて欲しい。ただ一言軽く挨拶程度してみたい。なぜそんな簡な事ができないのか。歯がゆかった。
そんな時、運命の事件は起こった。
鈴木はサークル仲間でも評判の悪い男だった。女好きだがもてない。その鬱憤をぶつけるように、セクハラ行為を繰り返してた。
ギリギリ犯罪にならないレベルで、文句を言わないような女の子ばかりを狙った悪質な行為。周りも時々軽く注意するぐらいで何もできない。
その鈴木が次にターゲットにしたのが紫だった。
「テニス教えてあげるよ」
後輩指導という名目のセクハラの始まりだった。
「グリップが違うんだよ」
そういいながらベタベタと彼女の両手を握る。
「フォームチェックするね」
と腰やら背中を嫌らしく撫でる。
「スイングはこうだよ」
などと背中から抱きつくように体を密着させる。
彼女も当然嫌がってたが、先輩という事で無碍にもできないようで遠まわしに逃げていた。しかし鈴木は彼女を逃すまいと、しつこくつきまとう。
周りのサークル仲間もみんな鈴木のセクハラに気づいていたのに誰も助けようとしなかった。
彼女も誰かに助けを求めるような視線すら見せなかった。
誰とも特別に親しくしてなかったとはいえ、なぜ誰も助けようとしない! なぜ誰にも助けを求めない。
俺の怒りが頂点に達して、その時何にも考えずに言ってしまった。
「その手を離せ! 彼女は俺のものだ」
そして物語はプロローグに繋がる。
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