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「襲って来ないんですか?」
――声がした。
傘間は口を開いていない。道には少女と傘間だけ。
誰の声かは明白だった。
少女は近くに設置されている街灯の下で、立ち止まる。
「あー、痒かった」
と、少女は後頭部に手をかけると、そのまま自らの髪を引っ張った。
「まさかこの歳で人生初の女装をするなんて」
言いながら、少女――少年は振り返った。
右手に、先ほどまでつけていたカツラを握って。
少女ではなく――少年。
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