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思い出すだけで目頭が熱くなる。思わずDVDプレイヤーに手が伸びるも、そんな事をしている場合ではない。視界に時計の針が入った瞬間、自我と焦りが蘇った。
「感動してる場合じゃないし、なにDVDプレイヤーを起動させてんだバカ野郎!」
階段を転がり落ちる勢いで下り、洗面所まで走る。鏡の前で取り敢えず顔を洗い、髪型を適当に整え、決め顔をキメる。
「……んなことしてる場合じゃないだろ俺!」
鏡に映る自分の顔をこんなにも殴りたくなったのは、生まれて初めてかもしれない。
慌てて玄関へ直行し靴に足を突っ込んだ。今日の朝ご飯はお預けだ。
「行ってきます!」
返事はない。梨花は先に出たみたいだし、母親も仕事に出かけたようだ。ちなみに父親は仕事の関係で海外にいる。
玲太は靴の紐も結ばず勢いよく家を出て行った。
春休み明けの朝、多少慌ただしくはあるが、今日から月島玲太は高校二年生。
そして、忘れられない刺激的な一年が今始まろうとしていた。
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