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◇
「――というわけで、もうすぐ生徒会選挙がある。もし立候補者がいる場合は先生の所に来なさい。では解散!」
担任がそう言うと同時に、静まっていた教室はざわざわ賑やかな教室になる。
授業が終わり、生徒達はようやく自由な放課後を迎えた。玲太は席を立ち、斜め前の席に座る少女に声をかける。
「叶谷、今日はどうするんだ?」
「どうって……なにが?」
叶谷は首を傾げている。今の言葉だけでは少し足りなかったらしい。だから玲太は更に言葉を付け足して繰り返す。
「今日もこの後作戦会議するのか?」
「あぁ~それか。する!」
「そか、じゃあ中庭行っとくぞ」
「うん」
体験入部が終わった今では、部活大作戦が実行できない。だから新しい作戦を考えるために、最近は放課後に中庭で集まり、作戦会議をしていた。
だが、知恵を絞っても、あまりいい案が浮かんでこない。部活大作戦が巧くいっていた分、それ以上の作戦が思いつかないのだ。玲太は一人中庭で考え込んでいた。
「清き一票をよろしくお願いしま~す!」
「ん?」
声が聞こえる。それも一つではなく、いろんな所から大きな声が聞こえた。気になって見に行くと、そこには大名行列を作り行進している生徒達。人に囲まれて演説をしている生徒。掲示板にビラを張り付けている生徒。学校内が部活勧誘の時以上に慌ただしかった。
「生徒会選挙の準備か……」
演説の声に混じり聞こえるのは応援の声。見れば、生徒会に立候補すると思われる生徒の周りには常にギャラリーがいる。
そして、応援されている側の人は、玲太でも見覚えのある顔ばかりだった。
バレー部キャプテンの浅黄先輩を始め、部活で名をあげた生徒達。前期生徒会の役員。ムードメーカーで、学年単位で人気のある生徒。みんなこの学校では有名な人達で人望のある人達だ。
「生徒会選挙か……」
玲太はそう呟くと、何かを思い付いたように、急いで中庭に戻った。
◇
「ってことで生徒会選挙に立候補しよう」
「え……?」
脈略のない発言に叶谷は眉を寄せた。玲太は真顔で叶谷の返事を待つ。しばらくすると、叶谷は話を理解したのか軽く頷いて親指を立てる。
「なんか分かんないけど、頑張れ」
「いや、立候補するの俺じゃない」
「じゃあ誰?」
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