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その日は晴れだった。
夜空に浮かぶのは、満点の星々。
煌めき光るそれは、まさに絶景というものに相応しかった。
そんな星空の下。
一人の男が歩いていた。
「ふーん、ふふふーん」
男が鼻歌を口遊む。
何か良いことがあったのだろうか。
深夜にも近い時間帯。
人通りも少なく、耳元に装着したイヤホンから流れる最近の音楽を聴くその姿は、不審者以外何者でもない。
しかし、男はそのことに気付いていないのか、口元を緩ませて呟く。
「まさか、槙野先輩に告白されるとはなー。ついに俺にもモテキ到来?」
思い浮かべるのは、同じバイト先の先輩の姿。
歳は二つ程上で、現在は大学生。
高校生である彼は、何気ないフラグから発展し、今日彼女から告白を受けた。
同時に、受けた彼は、前々から先輩のことを可愛いなぁと思っていたので、それを快く了承。晴れて今日からカップルという関係を築いたのだ。
その時の状況、先輩の仕草や表情、言葉。そう言ったありとあらゆる"情報"を記憶の中から思い出してニヤニヤする。
今でも止まらないやめられない。そのニヤニヤが。
このままではダメだ。そう無理矢理自分に生き込んで、何とかそれを抑えようとする。
……完璧な"不審者"が誕生していた。
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