終わりと始まりのプロローグ

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 焦熱が村を蹂躙していた。広がった業火は家も人も飲み込み、煉獄もかくやという様相を示していた。  何もかもが炎に包まれた村には3つの人影があった。  1人はザシャ・ゼーゼマン。黒色の戦術飛翔機動鎧――竜を纏う竜騎兵だ。  彼の竜は戦術飛翔機動鎧リントヴルム。数ある竜の中で、最も平均的な性能を持つこの竜だが、汎用性に長けている上、用途に応じたチューンアップにより千差万別の性能を発揮する。  現在ザシャが身に付けているリントヴルムは高速機動仕様だ。翼の大型化と軽量化により全竜中最高クラスの機動力を誇る。 「クソガキちゃん、確保とォ。よし野郎共、順次帰投しろ」  もう1人はザシャがクソガキちゃんと呼んだ長い銀髪の少女だ。ザシャが肩に抱えている彼女は、気を失っていて今はぴくりとも動かない。  きれいに整った顔には真新しい痣があり、痛々しかった。目には何重にも布が巻かれていて、視界を塞いでいた。 「……」  最後の1人は背の低い少年だ。土にまみれた服の隙間から見える肌に無数の青あざがあった。  身体はぼろぼろ、息も絶え絶え。それでも少年は立ち上がり、ザシャに拳で挑みかかる。
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