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鍛冶師にして一流の異端技術者であるヨハネス・アーブラーの朝は早い。
午前4時に起床したヨハネスは、炉の熱と煤で色褪せた仕事着に着替えた。
眠たげに目を擦りヨハネスが向かう場所は仕事場だ。
仕事を始める前に妻と娘たちに挨拶し、磨き、万全の状態で仕事に臨む。
前日の仕事が終わった段階で綺麗にしてやってはいるが、竜を生み出す作業は命懸け。万が一の事があってはいけない。
私室とは正反対にきれいなヨハネスの工房にはいつもは誰もいないが、今日に限って先客がいた。
「よお、ヨハネスじいさん」
と、先客は明るく笑い手を上げる。
トバルカインだ。1年前炎の中に倒れていたこの少年は、時々馬鹿なことをしでかすが基本的に勤勉で優秀だった。
「おう、トバルカイン……」
工房に一歩入ったヨハネスは目をむいた。
トバルカインは今まさに、馬鹿なことをしていた。
トバルカインは娘――昨日完成したばかりの新型竜、グレンデルを装着していたのだった。
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