竜騎兵、発進

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 ヨハネスの顔が朱に染まり、工房に怒声が轟く。工房入り口付近の作業台から赤錆たレンチがかっ飛ぶ。 「わしのグレンデルに何をしているこの馬鹿弟子がァ――!」 「あッぶねーな!? いきなりレンチ投げんじゃねーよ脳筋ジジイ!グレンに当たったらどうする!?」  豪速のレンチを辛うじて避けたトバルカインが叫ぶ。  ハッと第二投の体勢に移行しつつあったヨハネスは手を止めた。トバルカインは今すぐ抹殺したいが、納品前(よめいりまえ)の娘を傷付ける訳にはいかない。 「お、おお。そうだな……んでトバルカインてめえは何してる?」  ヨハネスは殺意を抑え、ニカッと笑顔を作った。怒りに震える手で工具を作業台に置く。  そんなヨハネスの心境などつゆ知らず、トバルカインは茶目っ気たっぷりに左目をウィンクさせた。 「何ってナンパだよ、ナ・ン・パ。お嬢さん、ちょっと遠乗りしませんか、ってな」 「師匠の娘を口説いてんじゃねぇこの馬鹿弟子がァ――!」 「どっちが馬鹿だハンマー投げんな馬鹿! 遠乗りくらい良いじゃねーか!」
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