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わかっているのは、出会ったときのトバルカインが酷い有り様であったこと、赤錆の塔が鉄壁の城塞都市アイゼンブルクにあること。
そして、レーニという名の少女はまだ魔女として処刑されていないことくらいだ。
「確かにベーメン以来どこもかしこもてんやわんやだ。おかげで生きてる魔女も何人かいるだろうよ」
だがな、とヨハネスは続ける。
「それがどうしたッてんだ。その子が無事でいる保証がねえ。赤錆の塔にいるって保証もねえ。そもそも助けたところで――その子は魔女なんだぞ」
この世界のどこにも魔女の居場所はない。
遥か東の異国でも目指せば話は別だが、そんなものは夢のまた夢。
魔女など助けたところでどうにもなりはしない。仮に助けたとしても、抗いようのない現実に潰されるだろう。
ヨハネスは、トバルカインを止めようとした。知る限りの言葉を尽くし、必死に説得した。
トバルカインは黙って話を聞いていたが、やがて首を横に振った。
「ジジイ。悪いがそういう問題じゃねえ。魔女だの無駄だの生きる死ぬだの、一切合切どうでもいい」
「なら何が問題だ!? 何でてめえは死地に行く!?」
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