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冷たい、硬い感触で目が醒める。
その感触の正体は、なにやらけたたましい音で耳を汚していた。
徐々に意識がはっきりと状況を認識する。無理に覚醒をしたためか、こめかみのあたりがズキリと痛んだ。
まぶたが持ち上がる。冷たい硬い目覚まし時計が目の前で仕事を全うしていることに気づき、寝起きの少年はアラームを力いっぱい止めた。
リン……と音が消えてすぐ、今いる部屋のドアの向こうから歩く音。音は尽きず、むしろ音は重なる。
「麻貴(アサキ)、起きなさい。もう朝よ」
優しい声色。
しかし、偽りの声色。
慣れた不快感を身に覚えつつ、母親の声を聞いた都山 麻貴(アサキ)は、ベッドから身を起こして立ち上がる。
「うん…。今行くよ」
二度寝なんて無駄な真似はしない。
よく整頓された部屋を横断し、ドアノブに手をかけて、扉をゆっくり開けた。
遠くで、銃声。
一瞬、立ち止まる。だがその音は、麻貴の動きをたった一瞬、止めただけであった。
再びリビングへと歩き出した彼は、眠い目をこすり、小さく呟く。
それは、今の銃声に対する、単なる怒りに他ならなかった。
ちくしょう……、と。
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