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ただのどの奥に栓がされたように、トーストが入っていかない。
無理に詰め込む形で、麻貴は朝食を完食。足早にリビングを立ち去り、洗面所へと逃げ込んだ。
テレビの音は、ここまで聞こえてくる。蛇口をひねり、顔をゆすぐことで音を打ち消そうとした。
テレビの音は一瞬だけ消えるが、しかしすぐにまた聞こえ、情緒をかき乱す。
「くそ……」
明確に。
感情が顔に出ているのが鏡に映った自分からわかる。それは、いまだに忘れることのできない。
いや、いまだに何も解決していない事態によって、日常的に湧き上がってくるのだ。
怒り。
傍らにあるタオルを握り締め、顔を拭く。
決して短くはない髪が、その行為を邪魔をするのも今は不快でしかない。
地団駄を踏みたい気持ちをこらえ、歯ブラシを手に取った。
今日も始まる。無力を感じる日々が。
そして、今日で終わることを願う。
叶うことはないと、知っていながらも。
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