崩壊しかけた世界の中で…

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少年は少女に近づき 抱きしめた。 少年はそうしなければ いけない気がした。 だからそうした。 大丈夫だよ。 少女の耳にやさしい 声が聞こえた。 やさしく 頭を撫でられた。 涙が溢れた。 自分以外は 敵だと思っていた。 視界が歪んで 前が見えなくなった。 落ち着くのを 待ってくれたのだろうか。 しばらくしてから 少年に名前を聞かれた。 イリナ。 少女は 短く小さな声で 答えていた。 少年は カルマ と名乗った。 それから少年と 少女は話しをした。 静かな湖の畔で。 柔らかな光が 降り注ぐ場所で。 少年と少女は 話しをした。 色んな事を話した。 好きなものを。 嫌いなものを。 自分の事を。 故郷の事を。 昔の事を。 今の事を。 少年にとっても 少女にとっても それは、 楽しい時間だった。 初めての筈なのに 懐かしい様な 楽しい時間だった。 しかし、 それは長くは 続かなかった。 敵が来たのだ。 敵は、 少年にとっては 味方であった。 しかし、 少女にとっては 今 自分と少年以外は 敵でしかなかった。 少女の身体は 自動的に 機械的に 素早く 敵を 殺した。
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