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3、自動販売機に変身だよー。本当だよー。
ふぁーあ、今日も元気に目が覚めた。
今日の朝ごはんは何にしようかな? あっ! バッタ見っけ。
手足をもいで、ぱくぱくむしゃり。ま、まずい。でも、栄養にはなったね。はーと。
今日は自動販売機に変身しよう。そうだ、そうだ、それがいい。
まずは、髪の毛を綺麗に撫で付けて、リップクリームを塗って、潤いを出した所で、出発進行ーー。
ガチャ。玄関から出た音だよ。分かるよね。
うわあ。今日は雨か、湿度が高くて体にまとわりつくよ。あうあう。
どこで自動販売機になろうかな。人が多い所がいいよね。そうだよね。
駅がいいかもー。よっしゃー駅へ行くよ。タタタタタッ。
はい。駅へ着きました。早いでしょ。
監視カメラが付いていないことを確認して。
ピッカピカー。
はい、自動販売機になりました。早く誰か来ないかな。ワクワクしちゃうぜ。
あっ! 誰か駅の階段から降りてきた。いえーい! 高校生だな。
「あれ! 昨日は自販機ここにはなかったぜー。新しい自販機かー。買ってみっか」
おお、買う気満々、悩んでいるねー。
「何だこの自販機変なのばっかり売っているぜ。ジュース、アイス、オデン、本、フィギュア、ヘビ、愛の言葉、絶叫、風、エトセトラ……」
「よし、まずはフィギュアを買ってみるか。100円だな。ボタンプッシュ」
あっ! 僕の体を押された。ビクン。フィギュアね。おらよ。
がしゃん。
「何だこれ、3年2組の赤山君のフィギュアって。誰だよ。今度は愛の言葉を買うか」
こいつ、高校生なのに愛の言葉を買いやがった。やはり人間は奥が深い。なんて言おうかな。よし。決めた。
「あなたのことを生まれる前から、愛しています。私の体をいくらでもプッシュして!」
2キロ先まで聞こえる声が木霊した。
「あいやー。俺、こんなに感動したの初めてだよ。次は絶叫を買うか」
くっ! この子やるわー。このままでは僕負けてしまうかも。今回はこれでやめておこう。
「あっ! 後ろにあなたの好きな子がいるわよ」
「えっ! 何処に?」
後ろを向いた今がチャンス。
僕は変身を咄嗟に解いて、その場を去りました。ふう、なかなかの高校生だった。でも、人間について、一つ分かった気がするよ。じゃあもう家に帰るか。
今日もぐっすり眠れそうだ。そうだそうだ。
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