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「父さんさ、クリスチーナ=レイグランド?=アリスみたいな人知らない?」
「ヒント頂戴。」
入学祝いと言って作った、ローストビーフを飲み込むと父は頭にハテナマークを浮かべながら聞き返した。
「可能性があるとすれば『グラディアル』の登場人物。」
「あー。クリシーナ=レイクラッド=アリスの事か?いるいる。そのクレアがどうかしたのか?」
「今日、そのクレア?を名乗る人がいてね。昔の仲間とか此方の世界とか言ってたんだけどなりきりって奴かな?」
「クレアはボツキャラなんだ。」
耳をうたがった。
「厳密に言えば読み切り版では居たんだよ。ただ連載を始めるに当たってカグラともリーザとも半々キャラが被ってるから連載版ではカットしようって事になってな。」
「じゃあ、オリジナルで作ったのがたまたま同じ名前とか?」
「お前、さっき名前間違ったろ?クリスティーナとかクリッシーナとかわざわざよくある名前を避けて使ったんだ。偶然ってのも考えにくい。」
「じゃあ、漫画の中から出てきたとでも?」
父は笑って答える。
「待てって、読み切り版ではいたんだからその頃からのファンって事もあるだろ。」
「そうだよね。念のためそのクレアってキャラクターの設定資料とかあったら見せてもらっていい?」
「飯を食ってからな、このローストビーフ時間かかってるんだから。」
最近、父が料理に目覚めて夕飯はちょっと豪華だ。
「美味いか?」
「うん、美味い。」
「料理漫画でも描いてみるか。アットホームな奴。」
自分の息子の本名を勝手に使っちゃうような人がアットホームの意味解ってる?
と問い詰めたい。
「これが設定資料。読み切りの原稿はこれ。」
見て…、背筋が凍りつく。
「ごめん、コピー機借りる。」
「どうした?」
「そっくりなんだよ。目鼻立ちといい。」
「それは一度拝んでみたいな。」
「そうだ!このクレアってキャラクターにモデルっていないの?」
「いるには、いるが…。」
そう言って奥から折り目がたくさん付いた紙が出てくる。
「これが父さんと母さんってのは分かるよな?」
一番上にある二枚の顔写真を差していった。
「っで、モンタージュして。女の子成分の高い顔。これがクレアのモデル。」
紙を指でなぞりながら一番下の写真を指す。
「これって…」
「時期的に言えばテイトの姉予想図。」
それもまた、ゾッとする話だと思った。
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