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「…なんでしょう。」
「松田テイトさんですよね?」
「…はい。」
「えーっと、本名ですか?」
あー、いきなりこの質問きたかー。
教室を見渡す、後ろの方にニヤニヤしながら様子を見ているグループがある。
ああ、そういう事か。腹をたてては気の毒だな、一度深呼吸を落ち着いて答える。
「ええ、本名ですよ。『グラディアル』の主人公とは関係ないですけど。」
うん、完璧な答えだ。
「関係ないとか嘘ついたら逆効果だよ。」
っと横槍を入れて来たのは神楽だった。
「そうね、本当のことを話した方が後々楽だと思うけど。」
理沙まで言い出す。
これじゃもう引けないじゃないか!
「あー、僕の父親が『グラディアル』の作者でね。僕の事をモデルにした上、名前まで使われたんだよ。」
「じゃあ、公式に松田テイトって事ですか?」
少し興奮気味に松谷君は訊く。公式って…。
「公式っていってもなぁ、僕自身が非公認なんだけど。どうなるんだろうね神楽?」
「カグラ!」
松谷君は驚いたように少し叫ぶ。
この面倒くさい状況、他人事と思ってませんか?神楽くん、理沙さんや。
「畜っ…!ああ、非公式って事でいいんじゃないかな。俺も認めてねぇし。なあリーザ!」
その調子ですぞ、カグラくん。
「リーザ言うな。気付いての通り神楽も私も『グラディアル』の登場人物のモデル。あ、勘違いしないでね私の名前は理沙だから。」
「ほうほう、そうなんですか!」
松谷くんも乗って来ている。
「なまじ『グラディアル』が売れたもんだからこうして自己紹介どうするか相談してる訳さ。まあ、テイトだけだけどな。こいつ小学、中学とあだ名『勇者』だぜ?笑っちまうよな!」
「高校でもそのあだ名になっちまうからやめてくれ。でもまあ、こんな感じさ。」
「ほうほう、羨ましいなぁ。」
その反応は間違ってるぞ、松谷君。
「えーっと、友達になりませんか?」
えっこの流れで?そりゃあ友達が増える事にこしたことはないけどさ…。
「まあ、いいんじゃない?」
「そうだな、うん友達は多い方がいい。」
「あ、ああそうだな。」
こりゃ高校でも『勇者』呼ばわりだな。と僕はがっくり肩を落とした。
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