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「君は、僕に用があったんだろう?ほら、遠慮せずに話してもらおうか。」
「・・・・・・」
「黙られては困るな。・・・それなら、僕の質問に答えてもらおうか。」
橘君は無言のままそっと首を縦に振った。
「まず、さっきの絵琉のときの反応。君は絵琉のことを知っていたように見えたんだが。一体どこまで知っている?」
「楠木さんは貴女のお父様の妹様・・・和泉様の娘。あなた方はいとこ同士でしょう?それに、楠木さんのお父様は前々から上橙園とは何かと縁のある家柄の方。それくらいは此処へ来る前に調べさせてもらいました。」
「そうか、じゃあ、どうして此処に来た。」
すると、僕の言葉を聞いた橘君は顔を暗くした。
何かやましいことでもあるのだろうか。
「僕に仕えていたのは橘君だ、橘琥太郎だ。君は違う。同じ容姿で、同じ声で、同じ香りを纏って。でもそれじゃ違う。僕と一緒に時を過ごして、僕に沢山の感情をくれて、最期まで僕を守ってくれた。それが橘君なんだ。だから君はわざわざ僕のところに来る必要はないんだ。・・・それとも――――」
そこまで言いかけたとき、僕の声を遮ったのは、橘君の落ち着いた声だった。
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