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少し躊躇ってから照れたような表情で見つめられる。
それは宛ら恋する乙女のようで。なんだか面白くて僕も見つめ返す。
テーブルの中心で視線がきゅっと絡み合う。
「それは・・・・・・僕が貴女を気に入ったから。」
「・・・は?」
「いや、その。・・・いつも兄から凛音様のお話を聞かされて、最初はあまり興味はなかったけれど、日に日に気になって。それで、凛音様が中学校に入学したこの春から貴女にお仕えしようと思いまして。」
「はぁ・・・・・・でも、それなら式はどうした。」
「あ、それはちゃんとお返事を聞いてから行うつもりで。」
「そういうところは考えていたのか。・・・兄にそっくりだな。」
「そうですか?」と言う彼の表情はもう琥太郎君そのもので。
双子のように似ていたが故の周囲からの期待。それに対して向けられた眼差しはきっと彼を苦しめたのだろう。
僕には関係ない、そんな感情。
目の前で子犬のような笑顔を向けてくる彼には僕よりも沢山の感情があるのだろう。そう考えると、なんだか彼を本家に返すのは惜しいと思ってしまう。
「しっかり仕事、してくれるんだろうな。」
「え・・・い、良いんですか?」
「まぁ、僕は捨てられた子犬をほうっておくことが出来ない性格でな。」
「子犬・・・・・・っありがとうございます!精一杯頑張らせていただきます。」
***
その日、僕には新しいようでどこか懐かしい、そんな執事が付くことになった。
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