1人が本棚に入れています
本棚に追加
「凛音!早く~。」
息を切らしながら校門へたどり着くと、那波、ともちゃん、このちゃんと絵琉が待っていた。
「あれ、どうして絵琉がここに?」
「あ、お姉ちゃん。さっき那波さんがいらしたのでお声をかけたところ、
お姉ちゃんを待っているとおっしゃったので一緒に帰りたいな、と思って。」
「そうか・・・皆、待たせて申し訳ない。それじゃ、帰ろうか。」
そう言ってスカートを翻して歩こうとした。
けれど出来なかった。まばたき一瞬のあと、僕の体は宙に浮く。
そして夕焼け空を映していた瞳には一面の黒が映った。
「お迎えにあがりました。お嬢様。」
聞こえた声は変声期を終えたであろう男のもの。正直なところ、この男の声はどこか聞き覚えがあり、鼻腔をくすぐるこの匂いもどこかで嗅いだことのあるものだとわかる。
そして、僕はこの男に横抱きされていたことに気付き、顔を上げる。
「琥太郎・・・?」
そう呟いた僕の声は夕日の中に溶け、横抱きされたまま近くに止めてある車に連れ込まれた。一緒に居たともちゃん、このちゃんは驚きの表情だ。
そして僕を乗せた車の運転手は、僕を抱えて入ってきた男と言葉を交わすと、そのまま車を発進させた。
最初のコメントを投稿しよう!