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「お嬢様が幼い頃、執事をされていた方がいらっしゃいましたよね。」
「あぁ、京極の家のじいやか・・・」
「はい。その方がお亡くなりになられたとき、本家での通夜の際、次の執事を決める会議を行っていたんです。」
そう言って、橘君は僕をソファまで運んだ。
そして、ガラス細工でも扱うかのように優しく座らせてくれた。
こんなに気を遣ってくれるところはやっぱり琥太郎君と似ているなぁ・・・などと考えながら、僕は制服の裾をなおして言った。
「・・・それに、琥太郎君は参加していたのか?」
「はい。当主様がお嬢様を任せられる者だけを集めての会議だったとか。それで・・・」
橘君の話は少し長かったので省略するとこうだった。
・その会議で、本当は彼の従姉妹の小雪さんと雪帆さんのどちらかが僕の世話を命じられた。
・けれど、琥太郎君が必死に御祖母様に頼み込んでくれた。
・その通夜が終わり、僕が楠木家の車で家に帰っている頃に本家では長々と会議が行われ、最終的に琥太郎君が僕の執事に決定した。
ということだった。
「意外だな・・・」
そうですか、と不思議そうに僕の顔を覗き込んでくる橘君の顔が琥太郎君と重なる。
そして、つい視線を逸らしてしまう。
「お嬢様?どうかされましたか?」
「いや、なんでもない。それより、君は本家と主従関係を結んでいるんだろう?それならどうして僕のところに・・・」
「あ。インターホンが鳴ってますね。出てきます。」
言われてみれば、確かにインターホンの音が聞こえる。
僕は「都合が良すぎないだろうか」と呟き、制服を着替えに部屋へ向かった。
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