第一章:赤

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 「あの・・・さっきからあんまり状況がわからへんのやけど。いったい何の話をしてるのやらさっぱり・・・」  「あ。すまない。ちょっと僕の家のことで・・・」  絵琉、那波、橘君と4人で話を進めていると、このちゃんが小さく言った。    「それにしても、凛音のお家ってすっごい広いね~。あたしの家の3、4倍くらいあるんじゃないの?もしかして凛音の親とかってお金持ちなの?」  「たしかに。こんな素敵な家に一人で住んでるなんてなんか凄いよなぁ。」  「いや、これはその・・・」  「お、お姉ちゃんの親は海外で働いてるんですっ。だから、そこそこの収入はあるみたいで・・・それにっ、この家はお姉ちゃんの御祖母様が建てたもので、だから・・・」  絵琉が慌てて助け舟を出した。  「ま、金持ちなのは嘘じゃないけどね~」  ・・・あっけなく沈没した。  那波は空気が読めない人間なんだろうか?  そんなはずはないんだが。  「「へぇ~。すごいね~」」  「はぁ・・・まぁ、確かに親はそこそこお金を稼いでるらしいが、あまりそこのところは知らなくてな。」  「そっかぁ・・・ま、凛音が無事ってわかったんやしそろそろ帰ろっか。」  「ちょっとまって。さっきからずっと思ってたことなんだけど、楠木さんって何で凛音のこと“お姉ちゃん”って呼んでるの?」  ともちゃんの一言で場は一気に凍りついた。  絵琉は泣きそうな顔をしているし、那波は絵琉の背中をさすっている。橘君は黙ったまま下を向いている。  ともちゃんは緊迫した空気を見て「ぁ。言わんほうがよかったかな・・・ごめんな、楠木さん。」と謝った。  「大丈夫です、ただ昔からお姉ちゃんみたいに優しくしてくれてたからそう呼んでるだけで・・・」    絵琉は笑顔でそう言った。  「・・・じゃ、そろそろおいとまするわ。」  「あ、私も。」  「そうか、ではまた明日。」  四人の帰りを見送って、見上げた空はもう暗くなりかけていた。  隣には、まだ帰る気がないらしい橘君が立っている。  玄関で二人突っ立っていると、春の夕方らしい風がさぁっと頬をなでる。  その風が冷たくて、けれど少し心地よくて。僕は髪を耳にかけて橘君を見つめる。  「まだ、僕に言うことがあって来たんだろう?話すことがあるならさっさと家に入れ。」  橘君は無言で頷くと、そのまま先ほどの客間へ向かった。
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