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カチッ…
……
フゥ~………
喉の奥をメンソールが刺激する。
月に登っていく煙は狼煙の様だ。
それを見ながら枯れていたはずの涙がまた頬をつたう。
「ばかみたい………」
その言葉は今の自分に向けて。
「本当にバカ……」
その言葉は裏切った彼に向けて。
月明かりが海を照らす。
まるであの『庭』みたいに…。
いつだってあたしを見透かした目。
気づくとまた心の中で縋る……。
「助けてよ……
助けてよ…クロ……」
口に出した途端に溢れてしまう。
届かない声を乗せて、また月に狼煙を上げる。
苦しみから逃げられない。
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