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カツン…カツン…
ラビリンスの道は煉瓦造りで、履きなれないヒールの音が迷宮にいざなう様に軽快に鳴る。
映画『オズの魔法使い』で主人公のドロシーが優しい北の魔女に言われた言葉を思い出す。
『黄色い煉瓦の道を辿りなさい』
ここの煉瓦も偶然にも黄色だ。
そしてドロシーは魔法の靴を履いて黄色い煉瓦の道を行く。
オズの魔法使いに会いに……。
薔薇のアーチをくぐり暫く行くと小さな森の入り口に着いた。
「何かちょっと怖いかも…」
さっきまでのヒロイン気分とは一転して緊張感が漂う。
でも、折角ここまで来たんだ。
どうせこの庭にくる事は二度とないし、あの場違いの会場に帰るのも億劫だし…
…せっかくだから冒険しよう!
チラッと会場で心配する祖父の姿が浮かんだが、一度湧いた誘惑には勝てなかった。
わたしは再びカツン…と鳴らしながら森の中へ進んだ。
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