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いい加減、収拾がつかなさそうなこの状況に困ったモジャは、しゃがんだまま今だ悶えている広太の髪に付着している卵に気付いて、制服のポッケに入っているハンカチを取り出す。
「……っ」
しかし先程、広太に出逢う前の、トイレでバケツ一杯の水を親衛隊らにいきなり引っ掛けられた出来事を思いだし、湿ったハンカチを見下ろして、唇を強く噛みしめた。
こんなんじゃ、使えないよ…ね。
堪えきれない哀しみをそっと己の中に押さえつけるよう、唇を噛む力が強くなる。
すると、そんなモジャを知ってか知らずか、ふっと前から現れた手が、そのハンカチを攫った。
「おっ、良いの持ってんじゃんか。悪ぃけど借りるなー」
「え、あっ…」
言う前に使用されたハンカチは、広太の髪に付着した卵で汚れていく。
制止をかけようと反射的に伸ばしたモジャの手は、何をするでもなく虚しく下ろされた。
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