無念千万

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「お兄ちゃんの邪魔をしてはいけないよ」 何をするにも自由で、だけどやること成すこと平均的な僕に、両親の口癖はいつもその一言に尽きた。 僕より先に生まれた兄は、何をするにもやること成すこと賞を取れたりと優秀で、僕はそれ以下。 だから両親の期待や愛情が一斉に兄へ向くのも、自然の摂理で。 大物俳優である父に似た凛々しい風貌、ピアニスト天才と謳われた母の知能を全て兼ね備えた兄は、どこに居ても何をしても目立っていた。 僕はって?僕は全然さ。頭脳も平均的、容姿だって平々凡々だ。 そばかすだらけの顔が綺麗だと言える奴がいたら、逆に出会いたいものさ。 そんな僕を両親は早々に見限って、兄に愛情を注げるのは正解だ。 僕にも全く異論はない、だってそれが自分の名に傷をつけない“得策”だから。
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