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「大丈夫??」
心配そうななつの声が聞こえる。
「なつは、最初から、知ってた・・・?」
なつは少し悲しそうな顔で笑って、
「うん。知ってたよ。でも言うつもりはなかったけど。」
「何で!!」
涙が止まらない。
「何で・・・。俺、お前とやりたいことがもっとたくさんあった。
ずっと一緒にいられるって思ってたんだ。
なのに何でいなくなったんだよ!何で今頃思い出すんだよ・・・!」
泣きじゃくる俺の頭をなでながらなつは言った。
「ごめんね。どうしても、もう1度会いたかったの。
やすが私のこと覚えてなくても、会いたかったの。」
「俺だけ何も知らない。ずるい。何で俺だけいるんだよ!」
遠くから、バスの近づく音が聞こえる。なつはバスを見て、
「私はやすが助かって本当に嬉しかったよ。」
とふわりと笑った。
「もう、行かなきゃ。」
そう言ってバスのステップを上がる。
「待てよ!俺も行く!お前がいない世界なんて意味がないーー」
「それでも!」
追いかけようとした俺の言葉をさえぎってなつが言う。
「それでも、私がいなくても、意味がなくても、それでも・・・幸せになってね。」
「・・・っ!」
「私、やすの事、大好きだったよ。」
そう言った彼女の泣きそうな笑顔を見てしまうと何もいえなくて、追いかける事もできず、ただ、泣くしかなかった。
「こら、泣いたら男前が台無しだよ。」
そう言ってなつが笑うから、俺は顔を上げて
「なつ、ありがとう。好きだよ。さようなら。」
笑って言った。笑えていただろうか?でもなつは嬉しそうに、綺麗に笑って、
「ありがとう。・・・さようなら。」
そう言って、バスに乗り込んだ。ドアが閉まる。バスが動き出す。
この時、俺の止まっていた時間が動く音がした。
夏休みは1年に1度。
16歳のこの夏休みは一生に一度。
少しずつ、夏休みが来るたびに、少しずつ、確実に、成長しているのだろう。
止まっている事などできないから、来年は君の墓参りにでも行けるだろうか。と思いつつ、
俺の16歳の夏休みは終わった。
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