1人が本棚に入れています
本棚に追加
最後になつが行こうと言ったのは、懐かしい小学校の校庭だった。
誰も居ない夕暮れで赤く染まる遊具や校舎に懐かしさと同時に寂しさを感じてしまう。
「私、逆上がりができないの。」
なつは大変なことのように言うが、高校生なんて逆上がりができなくても特に支障はないだろうに、何故そんなに気にするのだろうか。
「今度教えてくれるって言った。」
そんな事言っただろうか?・・・言ったような気がする。
今日のような夕暮れの中、どれだけ帰ろうと言ってもランドセルを持とうとしないなつに今度教えてやると、確かに言った。
「あー、言った。確かに言った。はぁ、ほら、逆上がりはこうやって・・」
よっ、と反動をつけて鉄棒をくるりと回る。まだできたのか、俺。我ながら感心してしまう。
「すごい!もう1回!!」
「なつがやらなきゃ意味ないだろ。ほらやるぞ。」
そう言って練習すること1時間。
「よっ・・・できた!!」
「だろ!!やったじゃん!!」
なつは見事に逆上がりを成功させた。
「やすのおかげだ。」
「感謝しろよ。」
何だか子どもっぽい気もしたが、なつといる時間は自然で、楽しくて、2人でやったなと笑いあった。
最初のコメントを投稿しよう!