25人が本棚に入れています
本棚に追加
地響きが、辺り一面に響き渡る。
周りを見渡せば、夥しく地に染まった大地が視界を埋め尽くす。
必死に立とうとしても、震える足は言うことをきかない。
すぐ隣から、荒い息遣いが聞こえる。
「大丈夫……です、かっ……」
見るからに疲労を抱えた青年は、もういつ倒れてもおかしくない。
それでも、決して少女の手を放すことはない。
少女は青年の言葉に対し、穏やかにほほ笑んだ。
「私は、幸せでした」
砂と埃に塗れながらも、僅かも揺らぐことのない漆黒の瞳。
唇はかさつきながらも、美しい孤を描いている。
「貴方の生きるこの惑星で、貴方の生きるこの時代に、貴方の生きる隣にいられた。……もう、なにも望むものはありません」
「姫っ! なにをっ……! 私たちは生きるのです。貴女は生き延び、幸福に暮らすのです。私と……共に」
最初のコメントを投稿しよう!