序章

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地響きが、辺り一面に響き渡る。 周りを見渡せば、夥しく地に染まった大地が視界を埋め尽くす。 必死に立とうとしても、震える足は言うことをきかない。 すぐ隣から、荒い息遣いが聞こえる。 「大丈夫……です、かっ……」 見るからに疲労を抱えた青年は、もういつ倒れてもおかしくない。 それでも、決して少女の手を放すことはない。 少女は青年の言葉に対し、穏やかにほほ笑んだ。 「私は、幸せでした」 砂と埃に塗れながらも、僅かも揺らぐことのない漆黒の瞳。 唇はかさつきながらも、美しい孤を描いている。 「貴方の生きるこの惑星で、貴方の生きるこの時代に、貴方の生きる隣にいられた。……もう、なにも望むものはありません」 「姫っ! なにをっ……! 私たちは生きるのです。貴女は生き延び、幸福に暮らすのです。私と……共に」
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