プロローグ

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昨日まで笑っていた人が突然目の前からいなくなって、胸に釘を打たれたような衝撃と痛みが走り、悲しみがじわりじわりと広がって涙が止まらなくなった。 口を手で覆っても溢れてくる涙は止まらない。 どんどん、どんどん、と。 その人はもう帰ってこない。笑ってくれることも、声を聞くことも、温もりを感じることもできない。 死とはそういうものだ。 そのとき僕は当たり前のように存在する人が、いきなりいなくなることの喪失感と悲しみを知った。 胸に巨大な穴が空いて空洞化してしまったような寂しさ。 それは身体の奥底から蝕みやがてすべてを食い尽くしてしまうかのように恐怖と闇が広がっていった。 飲まれる――喪失からの恐怖と悲しみに。 悪夢は前触れもなく突然やってきた。 部活帰りの彼女は、その帰り道、トラックに撥ねられて落命した。即死だったらしい。 運転手は動転して現場から逃げ出したようだが、すぐに警察に捕まった。 惨状となった現場は血の海となり、生々しい肉片が飛び散り悲鳴が絶えなかったという。 彼女の腕は千切れ足はおかしな方向を向き、身体は真っ赤に血塗られていたようだ。 彼女の死と現場の状況を聞いた僕は、部屋に引き篭もった。毛布を頭からかぶりそして涙を流した。
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