プロローグ

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彼女の葬式に、僕は参列しなかった。もう戻ってくることはない、とわかっているのにどうしても彼女の死を受け入れられなくて、だから葬式に行ってしまうと彼女の死を現実として受け入れなければいけない、彼女の死を認めなければいけないと思い、それを否定したくて子供じみているけど部屋に引き篭もって過ごした。 連日、涙は止まらない。 脱水症状を引き起こしてしまうのではないか、というくらいに涙を流したと思う。目は真っ赤に腫れてしまって、痛い。 もうこの世界に彼女はいない。 いつも一緒にいた、幼馴染の彼女。 恋人とかそういう関係ではなかったけど、小さい頃からよく遊びくだらないことをしては笑いあった。それももうできない。 叶うならば、もう一度、彼女に―― 「会いたい」 毛布に包まって涙ながらにそう呟き、ぎゅっと薄い布を握り締めた。 人はどうしても受け入れがたい現実を突きつけられると、叶いもしない願いを強く願ってしまうのだなと感じたが、それはただの現実逃避でしかない。僕もまさに今はそんな感じだ。 世界から孤立し、あらゆる干渉を拒み、彼女の存在しない現実を認めたくない。 このまま僕も死んでしまえたら幸せなのに。 相生葵。 十六歳にして、不運な事故にてこの世を去った。
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