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どうも僕は霊媒体質らしくきょろきょろとあたりを見回し、葵はいないだろうかと探してしまう。
少し期待していたのだが見つからない。老人の霊がふわふわと漂っているくらいだった。その霊にこくりと頭を下げると僕のほうに近づいてきた。
「あんたワシが見えるのかい」
話しかけられた。
「まあ、昔からそういう体質なので」
「おぉ、そうかいそうかい。ならちょっと話し相手になってくれんかのぅ。幽霊になると喋る相手もいなくてね。何年ぶりかのぅ? こうやって生きた誰かと話すのは」
老人の形相がうれしそうに崩れる。悪い人ではなさそうだ。
しかし一週間ぶりに外に出て、他人と初めて接するのが幽霊とはいかがなものだろうか、と僕は自分に呆れてしまう。
「この周辺で亡くなった人なんですか」
「そうじゃ。もう十五年くらい前になるかな。ほら、そこに献花が添えてあるだろう。ワシもそこで車に撥ねられたんじゃよ。早朝の散歩中だった。一週間前に再び事故があったが、巻き込まれた娘さんは若くて、かわいそうじゃったな」
「その子、僕の友人なんです」
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