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「おや、それはまた、ご友人を亡くされて。お悔やみ申し上げます」
「うっ」
喉に込み上げるものが引っかかり嗚咽が漏れる。幽霊に悼まれるのもおかしなものだ。
「この場所は交通事故が多い場所なんじゃよ。道のカーブは緩やかなもんなんじゃが、カーブのすぐ先に交差点があるじゃろ。その交差点でよく衝突事故が起きるんじゃよ」
老人が指をさしたほうを見る。
本当だ。よくよく観察してみると、事故現場周辺は緩やかなカーブを描いた道のすぐ先に十字路がある。
交差点付近には『事故多発』『スピード注意』の看板が立っている。
葵の事故現場に目を戻すが、彼女は老人のいっていた交差点の事故に巻き込まれたわけではなさそうだ。
ガードレールの凹み具合を見ると、トッラクがそのままカーブに突っ込んだようだ。
「娘さんもワシも不幸なものじゃよ。事故多発現場は交差点だというのに、ワシらはカーブにっ突っ込んできた車にやられたんじゃからのぅ」
こくりと僕は頷いた。本当に不幸だ。
どうして葵がそんな目に遭わなければいけなかったのか。神を恨みたい。
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