番外編1

10/16
前へ
/878ページ
次へ
ほしかった。 どうしても。 あたしのものにしたかった。 あたしだけの…… 涼介くんが、ほしかった。 くるみがいてもいい。 あたしを、見て。 あたしのことを 特別にしてほしかった。 「なんで……バレたのかな」 別れた後の涼介くんは 情けないくらい落ち込んでて。 「寄んな、紗織。見られたらどーすんだよ」 むかつくくらいに 正直に、なっていた。 前は バラされまいと、必死に優しかったのに。 「………涼介くん」 「何」 優しかった。 だけど、 くるみのとは、ちがう。 「…………」 「何? 早く言ってよ」 気持ちが まったくちがうよ。 あたしへの優しさと くるみへの優しさは。 わかってる。 当たり前だよ。 “義務”と、“愛情”の優しさ。 泣きたくなる。 それでも…… あたしは、離れたくなかった。
/878ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1639人が本棚に入れています
本棚に追加