番外編1

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それがわかってても 諦め………切れないんだよ。 どうしようもないの。 気持ちが あたしの言うこと聞かないものは…… しょうがないじゃん。 「………俺はさ」 「?」 あたしがパスしたボールを 軽々しく片手で受け取った涼介くんは、 ゴールに向かって 丸く円を描くようにふんわり投げた。 「紗織を好きにはならないよ」 「…………。知ってる」 音を立てて ゴールが決まったボールは 急降下して落ち、 床をテンテンとバウンドしていた。 「けど、嫌いじゃない」 「…………。え?」 「嫌いにも、ならない」 ただ、驚いた。 喜ぶとか そういうこと以前に 予想しない言葉に、何回も瞬きしていた。 「今は紗織たちがいてくれるから、救われてる部分もある」 「……………」 「俺ってこんなだし、振られても……仕方ないんだよ」 寂しそうな横顔。 無理してるのが、すぐにわかる。 抱きしめたいのに…… 動けないのは、どうしてなんだろう。
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