番外編1

16/16
前へ
/878ページ
次へ
きっと あたしがくるみに敵う日は、こない。 涼介くんは あたしを好きにはならない。 「………涼介く……」 「よし、今からゲームしよ!」 突然涼介くんが 明るく振舞い、歩き出す。 ボールをあたしに差し出した。 「3点先に取った方が勝ち」 「えっ」 「紗織からでいーよ」 状況が飲み込めず、 あたしはオロオロしてしまう。 涼介くんは さっきまでとはちがい、 みんなの人気者“福田くん”の顔になっていた。 「…。ハンデいる?」 「い、いらないっ……」 あたしは 涼介くんが好き。 世界で一番。 涼介くんは あたしを好きにはならない。 きっと…ずっとなることは、ない。 「はやく、紗織!」 「…………」 それでも あたししか知らない彼も、いる。 それだけは、確か。 他の人にとって無駄だとしても あたしにとっては、そうじゃない。 今この瞬間が楽しいと思える限り あたしの気持ちは、無駄じゃない。 涼介くんにとっての あたしの存在も、意味がある。 だから…… あたしは、自分のために… 涼介くんの側に、いる。 いたいから、いるの。 それが少しでも 涼介くんの笑顔に、つながればいい。 そう思った。                   end.
/878ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1639人が本棚に入れています
本棚に追加