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「工藤くん!」
中庭を横切っていた時、ふと俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
声がしたほうに顔を向けると、一人の女の子が不安そうな面持ちで俺を見ていた。
よくよく顔を見てみると、その娘は一昨日俺に告白してきた、ひたすら色っぺぇ女の子。
名前は……えっと……うん、忘れたな。
そのなんちゃらさんは、俺に話し掛けようと小走りかつ女の子走りで迫ってくる。
が、走り続けていた俺は止まることなく、なんちゃらさんの横を通り過ぎた。
俺が通り過ぎる瞬間、彼女は鳩がRPG-7を喰らったような表情をしていた。
元はと言えばあの娘が原因でもあるんだ。まあ結果論だから何とも言えないが。
下駄箱に着いた俺は、上靴を脱ぎ散らかして下靴に履き変える。
校門へと向かう途中にも、何度か生活指導のジジイに呼び止められたが、聞こえていないフリをして学校を出た。
ジジイはバスケ部の顧問でもあるため、これで放課後の部室掃除の罰は確実になったな……
でもそんなことより、夕凪の容態だ。
かなり重体だってことは、命の危険があるってことか?
ははっ、あいつが死ぬわけないよな。
……死なれてたまるか!
俺のせいで喧嘩になって。意地張って謝ることもできなくて。
毎日一緒に通っていたはずなのに。
俺が傍にいてやれていれば、こんなことにはならなかったのに……
クソッ! んなこと考えてるより早く夕凪のとこに行かないと!
そうして俺はバスケで鍛え上げた脚を全力で走らせ、近くの病院へと急いだ。
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