プロローグ

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「……あら?」 曲が終わり、マイクから手を離した途端、彼女の雰囲気は一変した。 活発だった印象は消え去り、場所を確認するように辺りを見回し始める。 そして。 「ここ、ライブ会場じゃあ、ないですよね?」 なんてことを口にした。 むしろ今までそうだと思ってたのか……? 「盈先生……またわたし、寝ぼけてましたかあ……?」 「ああそうだな。間違いなく寝ぼけていたよ」 「そうですかあ。もっと気をつけないと……」 平気な顔で会話をする2人。 今の、寝ぼけてたのか? ……俺の中の縁さんへの印象が、音を立てて変化しているのがはっきり分かる。 「ところで盈先生、その方は……?」 「ああ。事前に話していただろう? 転校生の渡部 永くんだ」 「まあ、貴方が。すみません、お見苦しいところを……。わたし、相川 縁と申します。以後、お見知りおき下さいね」 「あ、はい。ご丁寧にどうも……」 ゆっくりと頭を下げる縁さん。 こんな第一印象じゃあ、忘れたくても忘れられないって。
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