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「――ここ、ですか」
「そうだよ。転校生くん」
茶色一色の、もはや木造建築の代名詞とでも言える雰囲気の廊下を歩いていった先。
導かれた扉は、建物同様、古くさい物だった。
木造で、あるべき標識や、扉自体にはガラスすらもない。
都会育ちの俺には、まるで何かの撮影現場かと思ってしまうような。
「分かっているとは思うが、この学校の生徒は、このクラスの14人で全員だ。……おっと、君を含めて15人だね」
そう言っているこの女性は、このクラスの担任。
「……と言っても、15人が揃うことなどまずない。か」
「……?」
彼女は、顎の辺りに手を当てて、半場諦めたような表情をしていた。
緒方 盈(オガタミツル)……緒方先生と呼ぼう。
余裕で170を越える身長に白衣をまとい、真っ黒な髪の毛を惜しみなく伸ばしている。
その姿は教師と言うよりも、どこか科学者や研究者といった印象を人に与えるだろう。
「さ、入りたまえ。君のことは事前に伝えてあるよ」
「……はい」
俺は、緒方先生によって開かれた扉の中に、一歩を踏み出した。
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