プロローグ

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『落ち込んだっていいじゃない! その後みんなで笑えたら』 スラリとした美しい肢体に制服を着て、歌いながら軽く躍り続ける。 その長く、少しパーマの掛かっている綺麗な髪は、彼女が動く度に空を舞い続けて。 『落ち込んだっていいじゃない! 涙も全部出し尽くしちゃえ』 そんな雰囲気に反しておっとりとした優しそうな2つの瞳は、常に俺たちを映していた。 俺たちを観客として見ているのだろう。 『ねえ 一緒に笑おうよ 太陽みたいになれなくてもさ』 「!」 俺と目があった彼女は、ひとつ大きなウィンクをしてきて。 その仕草に、不覚にも胸がざわついてしまった。 本当に、歌手というかアイドルみたいな……。 『僕たちに幸せが宿るなら きっとそれでもいいんだよ!』 自動的に、曲が終わる。 縁さんは少量の汗を流していたが、それすらも彼女を輝かせているかのようで。 「ブラボー! みんな、拍手だ!」 その声と共に、クラス内から手を叩く音が大量に聞こえた。 先生がそう言うのも分かる。 きっと声がなくとも、自然と拍手は生まれただろう。 とりあえず俺も、それに便乗しておく。 少なからず感動したのは、事実だしな。
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