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「何でそう思うんですかァ?」
「ここ数年での貴方がたの繁殖。被害者の傷痕。それら全てを合わせて、私は貴方がやったと思っていますが」
そこで一度言葉を切り、「一つ教えましょう」と前置きしてから話始めた。
「貴方が私に攻撃を仕掛けてみて下さい。そしたらこの部屋の狼は勿論、森の中の可愛い狼までぶち殺しますよ」
幼い指で示す狼の手には斧。
きっと私達と戦う為に持ったのだろう。
だが頭の狼からは戦意の色がキレイに落ちた。
驚きと恐怖に一瞬で支配された顔へ早変わり。
「な、何で……」
「自ら私と一緒に着いて来れば、まぁ。忠告程度で終わらせておきますが」
狼は無言で歯噛みし、カナタは優雅に微笑む。
これを見てなんとなくカナタ側が優位である事が分かる。
「い……く……」
「はい?」
「わてらが行く。だから、約束は守って下さい……」
「勿論ですよ」
クルリと此方を振り返り、可愛らしくブイサイン。
さっきまでの大人っぽさはどこへ?
「では外へ出て下さい。皆さんをキーパーハウスへ送りますから」
キーパーハウスと呼ばれるのは私達の本部兼、寮の事。
「皆、行くで」
頭を先頭に続々と湧いてくる狼をゲートへ誘導する。
やっと私の仕事だ。
皆を草原の中央に佇む青色の輪の前に立たせる。
「これがゲートです。この世界とキーパーハウスを繋げてあるので、ここを潜ってって下さい」
「こんなんで行けるんかいな」
「危ないとちゃいますか?」
口々に文句を言ってはゲートに近寄って離れて行くので、まずは頭を蹴っ飛ばして放り込んだ。
「かっ!頭ァァア!」
次々と寄って来る子分達もポイポイ放り込む。
あっと言う間に全員回収完了。
「結香先輩、強引ですね」
いつもの舌足らずな声で私を見上げる。
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